コンコン。
「まーすたーぁー♪」
「んーなんだー?」
「お部屋はいってもいい??」
「ちょっと待ってな」
もうそろそろおやつの時間だなぁ、と作業の休憩に入ろうとしていた太子は外の声に顔をあげる。
ご機嫌そうなエンマの声に、どうしたんだろうかと思いつつも扉を開けてやれば腰に何かがぶつかった。突然の衝撃に対応し切れなくて何かを抱えたまま尻餅をついてしまう。
そして見上げれば、にこにこと微笑むエンマの姿。
「!?っ、エンマ?」
「マスターハッピーホワイトデー!!!これ、皆からの代表のお返しね♪
俺ら夕方まで帰ってこないから!!んじゃーねー!!!!」
「は、エンマ!?、ちょ・・・これ、いったい・・・・」
バタバタバタバタ・・・・・パタン。
翳す右手空しく、エンマは軽やかな足取りで階段を降りて行く。
その姿を見送った後、太子は自分の懐にぶつかってきた何かに目を落とす。
「・・・・・イモコ、大丈夫か?」
「んーっ、んーっ!!!!」
口と手をタオルで縛られて、首元に赤いリボンを付けて
・・・・・・なぜか猫耳オプション付きのイモコが、苦しそうに顔を赤くしている。
手首と口が覆われてるので身動きも取れないのか。
太子はとりあえず、イモコを部屋の隅に座らせて布を取ってやった。
「・・・はぁ・・・・!!!く、くるしかった・・・・・」
「大丈夫かー?ほれ水」
「あ、ありがとうございます・・・・」
未だに呼吸を整えているイモコに水を差し出して、背中を摩ってやる。
黒い猫耳が茶色の髪から覗いているのを太子は、ふと疑問に思う。
「で、どうしたんだ?ぬこ曲でも作ってほしいってリクエストか?」
「・・・・ち、違いますよ太子・・・・」
「じゃあ何で猫耳?とリボン・・??」
「・・・・・・え、ええとですね。太子・・・!!」
相変わらずずれた事を言われて途端しどろもどろになるイモコに。
太子は先程のエンマの言葉を反芻して、遅れて気づいた。
「White Day?のプレゼントがイモコって事か?」
「・・・・こ、これはエンマとオニオとソラが無理やり・・・」
「じゃあ違うのか?」
「う・・・・それは・・・・・」
『イモコちゃんが太子にプレゼントvってリボンかけちゃえばいーんじゃんか!!!』
弟の恐ろしい発言に何故だか、ソラとオニオも同意して。
気づいた時には色んなものを装着されて、戻ってきたバショウが手にしていたラッピング用リボンを首にかけられ連行されてしまったのだ。
だからこれは自分からのプレゼントでは・・・・・無いのだとイモコは羞恥心に言い返してしまったのだが。こう目の前で首を傾げるマスターのまっすぐな視線に、嘘をつくのも馬鹿馬鹿しいと思えてしまう自分に。
「・・・・ち、違わなくないです・・・・」
「ほんとうか?」
「は、はい・・・・ええと。マスター・・・バレンタインありがとうございました。
今日は一日言う事聞いてあげます」
「ほんとうか!」
「え、ええ・・・・」
嬉しそうに目を輝かせるマスターにしっかりと頷いてみせる。
今度は自分からマスターのシャツをきゅっと掴んで、言葉を紡ぐ。
きっと自分は今顔が真っ赤なんだろう、でも気になどするものか。
これ位しないと、あの時の気持ちのお返しにならない気がしたから・・・・・。
「そうか、ん。じゃあイモコと寝たいな」
「!!!!?」
さらりと発された一言に、イモコの顔は一気に真っ赤に染まる。
何を言い出すんですか!と言い掛ける間もなく、太子は端に置いてある大きなベッドまでイモコを連れて行く。そして、太子の顔がイモコに近づいて・・・・・・。
ぽすん。ふわり。
思わず目を瞑っていたが、柔らかいシーツの感触に恐る恐る瞳を開ければ。
枕に寝かされて、同じように潜り込むマスターの姿。
向かい合わせになって、間近にある彼の顔にイモコは顔を背けそうになるが。
「最近忙しいのはお前もだっただろ?エンマが夕方まで皆出払うって言ってたから、それまでお昼寝だ」
「・・・・・え、ひるね・・・・」
「ん?どうしたイモコ。顔が赤いぞ?」
「・・・う、うるさいですよ太子!」
「何か変なこと考えたのか?」
「死んでください マスター」
「うお、こえぇよイモコ」
思わず握り拳を目の前に出すと、苦笑しながら謝られる。
その後右手で頭をゆっくり撫でられながら、太子は優しい笑みを浮かべて。
「いつか皆で川の字みたいに寝てみたいなーって思ってるんだよ。面白そうだろ?」
「それもう川じゃないじゃないですか・・・・てか、この猫耳外してもいいですか?」
「だーめだ。せっかく皆が付けてくれたんだから、今日一日付けてなさい」
「・・・・ちょ・・・!何ですかその公開晒し罰ゲームみたいなの!!!」
「何言ってるんだ、可愛いと思うぞー?」
イモコは猫みたいだしな?とくすくすと笑う太子に。
当の本人は喜んでいいのか分からない顔をしつつも、太子の手の暖かさに目を細める。
「さ、もう休め。起きたら一緒にカレー作ってくれるんだろ?」
「・・・・よく分かりましたね」
「だってホワイトデーのお返しだから、私の言うこと聞いてくれるんだろ?」
「・・・・・・勿論・・・です・・・・」
「おやすみ、イモコ」
うとうとと、まどろむイモコの頭を撫でていた太子は、嬉しそうにイモコに釣られて瞳を閉じる。
次に目覚めた時に、ちゃんと「ありがとう」と言ってやろうと思いながら。
「まぁ・・・イモコが居ればそれだけでいいんだけどな。私は」
小さな呟きは、優しい熱を込めて。
そんな麗らかな・・・優しい午後の出来事。
*END*
++++++++
終わったー!!!
無駄に長くてすいません、絵とかすいませんorz
というかエンマが気を利かせて二人きりにしたのにお昼寝とか・・・www
マス太子はイモコに手を出す気は無いのです、うん本当だよ?
イモコの事大事で仕方ないので、頑張るイモコ見れただけで満足なんだと思う。
マス太子は、冗談交じりに「ちゅーしてー」とか言うけど、いざ自分から本気で手を出す事はしない。
イモコが頑張ってその線を踏み越えようとするのを先に感じたら、うまーく交わして線を引くんじゃないかと。
でもイモコが大事なので変わらない態度で接するから、イモコがやきもきしてるんでしょうね。
そんなじれじれカレー芋が好きです、甘い触れ合いするのに本心が分からない二人。
此処まで読んで下さって有難うございましたー!!!!
絵は本日のみフリーにさせていただきますwww(誰も持っていかないよ!)
ハッピーホワイトデー!!!www
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